No4

夏の雲
F8

46×38


この絵は3年間もかかってます。

夏の南フランスの午後の日ざしは強い。
強烈な色彩が踊り狂うかのようにあたり一面をきらめかせている。
こんな光の束がこの世にあったのかと疑うばかりの光景である。
涼しげな木陰でさえもその存在を主張する。

ぽっかりと浮かんだ雲は、手を伸ばせば、つかめそうなくらいにすぐそこにある。
まるで、手桶にうかんだ絹ごし豆腐のようだ。

折り重なって編みこまれたパッチワークのように、ラベンダー畑がはるかに続いている。
この土地は広いのだ。

神様が土をこねて創ったように、農夫が土地を耕して畑を作ったように、
私もまた絵の具をこねて、山を作り、畑を作り、木を植えていく。
その作業は際限なく繰り返される。
そうだ。
よい土地にするために、畑を作っては塗りつぶし、木を植えては塗りつぶし。
雲を浮かべては、風が吹くときのように、大きな刷毛を持ってかき消してゆくのだ。
そしてまた、大きな雲を作る。

ひととおり仕上がった朝に妻が言う。「この絵はあっさりしているように見える」
そうか。
こんなに苦労しても、軽く描かれているように見えてしまうのか。

自然の中で百姓がてしおにかけて育てた野菜も、工場で大量生産された野菜も、スーパーに並べられれば区別がつかない。それどころか見劣りすることもあるだろう。
口に入れてもらいさえすればその違いがわかるのだが。




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