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私がヨーロッパに渡った主な理由は、油彩画を基本的なことから学びたいという思いからでした。
しかし、時すでに遅く伝統的なアカデミック体系は失われておりました。
多くの作家は油彩からも離れつつありました。
でも、ボザール(パリ美術学校)で解剖学の講義が行われていると聞きつけ、喜んで聴講に行きました。
最初の講義は印象的でした。
解剖学というとすぐにアナトミー(医学解剖)が連想されるのですが、美術学校で教えるのは美術解剖であると。
つまりモホロジー(morphologie)なのだと。
訳すれば形態学.といったらよいでしょうか。これは明らかに違う学問なのだということです。
解剖というと「ギョエー!」としりごみする人でも、形態学なら取り付きやすいのではないでしょうか?
それでも実際の人骨を手にとったりしますが・・・
ここに書きますのは手元にあるわずかのスケッチを使った覚書です。
講義を詳細に記録したノートは一時帰国の荷物にまぎれ込んでしまいました。ノートが見つかりましたら詳しい話を載せます。
もうひとつなるほどと感心したことは、勉強する際にあまり精密な図は描かないこと。
上記の図よりももっと簡略化した図を使います。
例えば、下の図を見てください。なんだと思います?
これは胸部の骨です。いわゆる肋骨です。
気をつけて見て欲しいのは樽型でないことです。
通常の解剖図では樽型に描かれることが多いのですが、間違いです。
よく観察すると胸の部分は平らです。
頭はこんなです。
歯並びまでは必要がなかったら描きません。
必要な形だけがわかるようにします。 |