No 14

草原
F3

27 × 22

この作品は私の制作活動に重要な転機をもたらしました。この作品以前はいかにしてすばらしい自然の光景を表現するかを念頭に置いていました。それはいつ終わるかもわからない気の遠くなるような作業でした。その作業の果てにあるのは必ずいいようもない敗北と挫折感でした。自分の技量に失望し、自然の光に完膚無きまでに打ちのめされるだけでした。そして結末は妥協とあきらめでした。

しかし、転機が訪れました。

あたりまえのことなのですが、目の前の光景は現実です。 しかし私の画面は麻布と顔料を混ぜた油絵の具なのです。 あくまで仮想の現実でしかなく表現の一手段であるにすぎないことに気が付きました。限界があるということはよいことでもあるのです。 いかに近づけるかはそれほど重要ではないのです。 それは作家の優越感を満足させるかもしれません。 あと少しだけ観客を驚かせるかもしれません。それだけです。 では何が大事なのかといいますと、それが喜べるものなのかどうかなのです。

観客に何を提供したいのか、自分は何に感激しているのかを問い直すことにしました。



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