絵の具の話の続きです。

−第一話−

<絵の具の話し(2)>

前回から、ずいぶん間があいてしまいました。申し訳ありませんでした。

今回は「乾燥」について。

初めて、油絵を描いた人はなんて乾燥の遅い絵の具だろうとイライラしたことと思います。

通常の店で買える状態の油絵の具は手で触れるぐらいまで乾くのに1週間ぐらいかかります。

始めはべたべたと濡れた状態が続き、次第に固くなって皮膜ができて固まります。

その後は下に描いたものを動かすことなく描き加えることができます。

この乾く性質と乾かない性質の二つを持つことが油絵の大きな特色となっています。

そして少しのコツを呑み込むことでこの性質を操れるようになります。

では、乾燥の仕組みを見てみましょう。

油絵の具は、空気中の酸素と結合することで固くなっていきます。これを重合と言います。

また、揮発性溶剤(ぺトロール、テレピンなど)を水のように使って、あたかも水彩絵の具のように稀釈して描画することもできます。この場合は溶剤が揮発すると、見かけ上の乾燥状態を作れます。おおよそ30分ぐらいで効果が出ます。その上に塗り重ねる場合は溶剤の量をすくなくします。そうすると下描きの層を崩すことなく塗り重ねられます。またもう一つの利点としてこの薄い層は乾燥が速くその上に載せた絵の具層の乾燥を促進する役目も持ちます。

もう一つ、ニス分を多く含んだ練り合わせ材を混入することにより、見かけ上の乾燥状態を作ります。この場合は上記の揮発性溶剤を使ったものよりも堅牢な絵の具層を形成します。わたしが好んで使うのはルフラン社のMedium Flamandです。これはパートシッカチーフと呼ばれます。半日から一日で触れるぐらいまで硬化します。

これらの見かけ上の乾燥状態は実際に絵の具が乾燥しているわけではありません。実際の乾燥には2週間以上を必要とします。

つづく
2003.11.11


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