私の作品について



私の作品について

  私の作品を初めからごらん頂いている方にはお気づきかと思いますが、少しずつ厚塗りになってまいりました。

 当初は、油絵独自の厚塗りの画面は生理的に合わず、あえて薄塗りにしておりました。
 もっとも薄塗りとは言いましても、ただ薄く塗っていたのでは体質(ボディーとも言います。絵具層の持つ質感のことです)が出来ないで、薄っぺらな印象の画面になってしまいます。それを避けるために薄塗りの場合は厚塗りの3倍以上の時間と手間がかかります。それでも画面から来る印象は弱いのでしょうか、よく描きこみが足りないのではという内容の指摘を受ける事がありました。
私自身の力量のなさのためなのですが、さびしい思いをしてまいりました。

しかし最近ではそれとは別に、油絵の具はある程度の厚みを持つと絵具層が独自の力を持ってくる事に気がつきました。また、下の層と上の層の交互に絡み合った構造によって、立体感を簡単に表現できます。
必ずしも絵の具を盛り上げる必要はありませんが。
 ご存知のように油絵には印刷物にはない豊かな立体感があります。それは個々の絵の具層の主張によるところです。小さい立体感の組み合わせで大きな空間感覚をも表現できるようです。

最近思うこと
 ここ数年来、製作に大変苦労する事が多くなりました。
思ったように筆が進まないで、長い事悩んでしまうようになりました。
以前は、もっと苦労なく描けていたような。
しかし、不思議な事に苦労して描いた物の方が、出来具合にかかわりなく、見る人にはアッピールするようです。
もともと、絵には不必要な部分が多いものですが、苦労した作品はそれが謙虚です。。

今回出品しました3点の「菜の花」の小品はもう2年ぐらい前から、製作途中でアトリエに眠っていたものです。 昔描いた題材の物を小さく描きなおした作品ですが、試行錯誤が激しいです。
試行錯誤といえば、「陽のあたる街」も何度も描きなおした作品です。
「雪の日」も今回のために2年前から描き始めたものですが、ずいぶんとあれこれ迷ってしまい、とんでもなく時間がかかってしまいました。
それでも発表するには時期早々なのです。
いったいどこに迷っているかを作品の中に探してみてください。

 今回も、作品を用意するのが大変でした。もともと描き遅いほうですので、本当のペースで言ったら1年に2点ぐらいしか出来ないのです。
しかし、それでは作家として成り立ちませんので、適当なところで見切りをつけて、発表するようにしています。作家として一番苦しむところです。
1999年3月